2018年10月31日にドコモが携帯電話の通信料を2~4割を削減すると公に発表をした。
菅義偉官房長官が同年8月に「通信料は4割下げられる。」と述べていた。
そして来る2018年11月1日。ドコモ・KDDI・ソフトバンクの携帯電話三大キャリアの株価が暴落した。今後はどうなるのだろうか。
通信料の問題提起
確かに海外と比べて日本の通信料は全く下がっていないのは確かで、公共の電波を特定の企業だけが搾取しているのでは?という意見も頷ける。
そもそも日本の携帯料金は本当に高いのだろうか?何を根拠にこのような話が出たのか。
こちらの図表をご覧いただきたい。
(参考:総務省 平成28年度電気通信サービスに係る内外価格差に関する調査)
総務省が調査をした資料(PDFで8ページ)
東京:5,942円
ロンドン:2,653円
グラフの中で一番安いロンドンと比較しても、2倍以上の差が生じている。
他にも調査資料は総務省が公表しているが、これに基づいて4割削減の余地がある。との発言に結びついたものだと思われる。
ドコモショック
政府の声を無視できなかったのか、ドコモが通信料を2~4割を削減すると発表した。
一般の消費者には願ったり!との意見が多数を占めると思うが、投資家は大打撃を被ることになる。
通信料を下げると当然ながら利益が圧縮されることになる。
利益が少なくなれば、配当金の減額も予想されるであろう。それを嫌い利益確定に走る方が多くなるのは至極当然の動きであろう。
2018年11月1日の各業者の終値は以下のとおりである。
NTTドコモ:2,426円(前日比-14.7%)
KDDI:2360円(前日比-16.1%)
ソフトバンク:8,310円(前日比-8.2%)
三大キャリが全て被弾した。
市場の阿鼻叫喚ぶりは凄まじいものである。
KDDIの収益を見てみよう
一番値下がり率が高かったKDDIの財務諸表を覗いてみよう。
(参考:KDDI決算資料 統合レポート)
こちらのグラフはKDDIの決算資料で、PDF4ページ目に掲載されている。
売上高の単位は10億円である。5,042と掲載されているため、5兆420億円
見てのとおりバケモノ企業である。
NTTドコモの売上高はKDDIの約2倍である。
なお、KDDIの当期純利益は5,700億円である。
(参考:KDDI 2019年3月期 第2四半期決算詳細資料)
こちらの資料はPDF2ページ目に掲載されている資料であるが、単位は(百万円)である。
売上高は5兆420億円には変更はない。ここで見ていただきたいのはモバイル通信料収入で1兆7878億円と約3割強を占めている。
もしも、このモバイル通信料を単純に4割削減をした場合、収入が1兆726億円となり、7,151億円もの減収となる。
単純に減額をした場合で計算しているので、それに伴う費用・コストは不変と仮定している。
当期純利益:5,700億円
収入減:7,151億円
こうなると見事に赤字である。
当然ながら、会社はこのような状態に持っていくことはしないであろうし、新プランを適用しないと恩恵を受けられないような仕組みが想定される。
仮に実質2割減だとしても3,575億円もの収入減が見込まれ、赤字にならなくとも黒字幅は大幅に縮小される。
配当はどうなる?
KDDIのみならず三大キャリアの収入減となれば、前述したとおり純利益は確実に減ることになる。
配当金には配当性向というものがあり、純利益から一株当たりの純利益を算出する。
その一株当たりの純利益の何%かを株主に還元する仕組みだ。
KDDIの配当性向は35%超えであり、一株当たりの純利益は235円と資料に掲載されているので、配当金は90円である。
もしも配当性向を35%とし、当期純利益が2,000円億円に下がったと仮定したら一株当たりの純利益は82円まで下落する。
配当金としては約29円であろう。
ドコモショックが起きる前の株価は約2,800円で配当利回りは3.57%であった。
同じ配当利回りを得るには812円の株価になってしまう。
さすがに机上の空論すぎるのでここまで下落するとは思わないが、官房長官という要人の発言力の重さは恐ろしいものがある。
携帯会社としては踏んだり蹴ったりの状況であろうが、個人の通信費が下がるのはありがたいことであるし、それで社会の消費が活性化すれば尚良いと思う。
ただ、株主の人の損害が計り知れない・・・。